日々の寄り道

俺の人生のひとりごと集

直島 

 ベッド争奪グランプリである。僕らが泊まった部屋は3つベッドがあるのだが、ひとつだけ格段に安っぽいベッドなのだった。つまり、今夜だれかひとりがこのしょぼいベッドに寝なければならない。
それはこのホテル一泊の代金と比べてしまうとどうしても納得できないほどの代物だった。最初、僕は棄権を申し入れた。しょぼベッドに寝れば宿泊費4000円引きにつられたのである。しかし、ここで戦わずして身を引くのは違うと感じ、ここはやはり対等にじゃんけんで決めようということになる。

 そして友人の1人であるゲイツ(仮)が負けてしまい、残った僕とエルモア(仮)が高級ベッド使用権を得たのだった。しかし、普段は感情を表に出さないゲイツがこのときは「あああ〜…。」と滝から落ちた空き缶のような落胆の声を上げた。相当ショックだったようだ。無理もない。nine。
 そしてゲイツは代わりに一番最初に風呂に入る権利を得た。ここで彼はさりげなく悪あがき的仕返しを仕掛けたのである。その内容ははっきりいって下品なものなので割愛する。そうして風呂に一番早く入り、仕返しを遂げたゲイツ

 僕らは夕食をコンビニで買ってきた。ホテルの夕食はスープ一杯2000円近くするもので、イッツセレブリティだった。そこで島の中で唯一のタクシーを呼びつけ、コンビにに向かったのだ。直島は観光地とはいえ人が少ないので、交通の便が悪い。夕食どころは早めにめどをつけ、地元の料理でもたしなめれば素敵だったが、僕らは観光に夢中だった。

 そしてくだらない談笑に花を咲かせているとき、高級ベッド就寝権を得た友人エルモアが寝てしまったのだ。酒が回っていたのだろう。彼はすぐに寝る。ドライブ中でもまず先陣を切って夢の中に駆けていく男は彼だ。 
 このときゲイツが動いた。なんとエルモアを放置し、そのまま自ら高級ベッドに身を沈めたのである。おいおいと思いながらも、こうなったら仕方ないかと思う僕。ソファで寝るエルモアに布団をかけてやり、夜を越したのだった。
 ゲイツは普段は非常に温厚で、落ち着きがあり、頼れる部分もある男である。しかし、ときに高級ベッドというやつは人の普段見せない一面までもを垣間見せてしまうものなのだった今回僕は悟ったのだ。高級ベッドにBe Careful。

そうしてホテルでの一日を終え、いよいよ旅行も最終日である。

最終日、まず昨日見れなかった家プロジェクトを見ようということになる。予想以上にホテルでのんびりしてしまった僕ら。豊島美術館を見ることも考えるとかなり急がなければならなかった。最終日はしょっちゅう走っていた記憶あり。



家プロジェクトははいしゃ、碁会所、角屋の3つを回った。南寺が一番有名とのことだったが、整理券と時間の問題でパス。特に角屋がインパクトありました。写真に取れないのが残念。和と未来的デジタルの融合のような世界観だった。



そうして近くのお土産屋で友達はまたかぼちゃを買っていた。店内にはRei Harakamiが流れている。エレクトロニカはマイナーな音楽でジャンル名すら知りわたっていないが、さりげなく、こんなところに。
そうしてバスに揺られ、僕ら直島の港から豊島に渡ったのだ。この豊島までのフェリーはゆれが激しく、ちょっとしたアトラクション状態だった。とにかくゆれ、船が波に当たり何度も浮き上がる。そんな人生のたとえ道のような航路の末、豊島にたどり着いた。

豊島は雨だった。どうしてこんなに雨はついてくるのか。晴れた夜の日に見上げる月のように、常に僕らに雨が付きまとう。



まずは島の端っこから攻めようと、最初に心臓音のアーカイブへ。ここは名前の通り、実際の人の心臓音を録音し、それをHeart Roomと呼ばれる室内で流すアート作品。Listen Roomというところで、登録した人の心臓音が聴けるんだけど、誰一人として同じ心臓音の人はいない。明らかに音の強さやリズムが違うのだ。誰しもが胸に抱えた楽器の音にひとり感銘を受けていたが、友達はそそくさと出て行ってしまった。



そうして個人的にすごく行きたかった豊島美術館へ。まずはカフェで食事。昼食をとっていなかったので、少しでも胃袋に力をと。まさにカフェご飯ってかんじのメニューを平らげた。



そうしていよいよ豊島美術館の唯一の展示作品母型を見る。靴を井脱いで作品の中へ入れば、そこは完全に日常から隔離された場所だった。ひたすらに静かに穏やかに時間が過ぎていく。これはぜひ実際に行って体験してみて欲しいです。

そのあとは高松に戻る。いよいよ旅行もエンドロールが流れ始めた。香川に来てまだうどんをまだ食べていなかったので、近くのショッピングモールのうどん屋へ。まずまずでしたね。うまい店とか行く暇がなくてさ。



そうしてバスで高松の空港へ行き、お土産を買った。羽田に帰ってきたのだ。横浜に戻りどこかに寄ろうかとも行ったが、全員疲労しており、結局まっすぐ家路についた。

もう一ヶ月近く前のことだが、本当に楽しかったなー。今回とにかく天気が悪かった。もっと天候に恵まれていたら、島からの海もきれいに見えたでしょう。でも待望の直島は僕の期待を裏切りませんでした。また旅行行きたいな。一応、次はひとりで金沢にいけたらなんて思ってます。またこの面子でどこかに行きたいね。